

私はリクルート出身ですが、リクルートのなかでは新規事業ばかり立ち上げていまして、この会社も、96年にリクルートの中で1回目の企画が立ち上がりました。当時、まだ「Yahoo!Japan」も無く、インターネットが一般化していない頃でしたね。だから「時期尚早だろう」ということで、一旦ペンディングにしました。そして、99年に「そろそろいいんじゃないか」ということで、もう一度立ち上げようという時に、たまたま米国で、About.comという会社がナスダックに上場しました。そこでいろいろとリサーチしてみると、僕が考えていたことと似たようなことをやっているなということで、たまたまバウンダーが知り合いという縁もあり、すぐに米国に飛んで、「僕は日本でこういうサイトを考えているんだけど一緒にやるか?それともケンカするか?」と、簡単に言うとそういうことですね(笑)。結局「一緒にやろう」ということになり、ジョイントベンチャーを作ってやっていくことになりました。ということで、米国のサイトをこっちに持ってきたワケではありませんね。
元々、リクルートでは「人ネット構想」というものがあり、それが今の方向性なのですね。インターネットがいろいろな方向に進む中で、検索ポータルを中心にした方向と、オークションを含めたECサイト、そして、ある一定の領域だけを深掘りしていくサイトというのがいくつかありましたけれども、インターネットが一般化するにしたがって、恐らく当時の見立てでいくと、普通の人が普通に使うメディアになる、というのがひとつ。もうひとつは今、ブログ、SNS、CGMが花盛りですが、特に個人が勝手に情報などを発信していく世の中になるだろう、と。

そうですね。そうなった時に情報が溢れかえる。その中から情報を選り分けて使うことが好きな人は勿論いますが、全部の人がそういう訳ではないですし、自分の好きな分野だったらいざ知らず、日常では探す時間もそうそうあるわけではない。そういう意味では、しっかりと信頼の出来るその道のプロがユーザーに変わって、コンテンツを提供したり、もしくはインターネットに散らばっている良い情報を集約して、整理してあげる。そうすることで、非常に信頼感があって、且つ共感性があるようなメディアが作れれば、Googleのような検索サイトを使う一方で、逆にこういうサイトの必要性が高まってくるはずだと思っておりました。
それで、ブログやSNS等も匿名で何を信頼して良いか判らない情報という構造になったり、もしくは個人ベースの情報源だって、コンテンツのテーマは色々ですよね。例えば、今日は食べ物のことを書いて、明日は仕事のこと。そうするとあるテーマで情報を探しに来た方からすると、全てが使いやすいワケではないという情報源、メディアとしての良いところ悪いところがありますけど、そういうものを補って、テーマ別で専門家を配置した信頼できるサイトを作れば、非常にユーザーのニーズが高まるのではないかと思ったのがひとつのキッカケですね。
インターネットが当り前になってくると、これは今の現象なので当時ではないですが、ユーザーが発信しだすということは、ユーザーが企業が発信する広告や情報をそのまま鵜呑みにしない状態になる。つまり口コミが拡がる。ですので、ユーザーに主導権が移っていく世の中になる時に、広告はそのまま受け入れられ無くなっていくと。
広告主の皆様は、ある種、信頼性のあるメディアを上手く使われたり、ユーザーの口コミを上手くサポートしたり、こういうことが求められていく世の中になってくる。その時に、我々のような第三者のプロ、中立的な立場のメディアというのは、その変化に対応できた場ですので、新しい広告コミュニケーションがここで発生するんじゃないか、ビジネス的にもかなり大きくなるのではないか、という見立てがあり、この会社を作ったということですね。
ブロードバンドの普及が順当に行ってくれたというのは、読みがその通りになったことの大きな背景のひとつですね。
また、我々はユーザーが主導権を取ってしまう世の中になった時に、一番シンプルに言えば広告だろうが、メディアコンテンツだろうが、ユーザー側に役立たないものは淘汰されるであろうと確信はしておりました。ですので、広告もひとつの貴重な情報源と捉えており、広告を情報に変え、メディアのコンテンツと同じように編集制作していくのが、弊社の「All About」というサイトなのです。
例えば、100ある広告の内の40程度はバナーなどの純広告ですが、残りの60は編集型広告という記事形式のものです。また領域によっては動画のコンテンツなどもありますね。広告をコンテンツ化することが得意なんですね。これはほっといても売れないので、代理店様とパートナーシップを組まさせて頂き、クライアント様にも担当がお伺いしながら啓蒙をし続けてきたことが、成長してきたもう一方の理由だと思いますね。
メディアコンセプトで言うと「量より質」「信頼性」。あとは「アンサーよりアイデア」です。発想を広げるためのヒントになる情報を提供する。それを全部ひっくるめると、要は「編集」という概念ですね。
「編集」とは、通常、ターゲット読者を設定して、そこに対してどういうコンセプトで、コンテンツを価値を提供するのか? その価値を実現するには、こういう切り口でやっていって、こういう用意をして、こういう人に発信させて、といったところを考えますよね? しかし、ネットの世界は、そういう概念が希薄であるような気がします。ツールとしての利便性が先に立ち、「とにかく数!」みたいなイメージです。
ですが、我々は「編集」にこだわりを持っておりますので、ターゲット読者を決め、コンセプトや質感を明確にしてやっていく。それが他社と違うところであり、All About"らしさ"だと思っております。

やはり人が作るものですから、調子が良い時もあれば、悪い時もある。そういうソフトウェアをポーンと作ったら回る、みたいな仕組みではなくて、生身の人間がマネージメント、サポート、プロデュースするところは非常に重要かつ難しいところですね。
ユーザーに対して責任を持つのは我々ですので、品質がよろしくないとか、ガイドが約束頂いた通りの活動をやって頂けないとか、そういう評価は3ヶ月に1回やっておりますが、交代頂いた方が良いというケースもございます。こうしたマネージメントもきっちりやっていかなくてはならないのは苦労点ですよね。
また、もう一点は専門知識とライティングスキルをはじめから兼ね備えている人はそう多くないということ。そこで我々はメディアのプロとして編集サポートを行い、専門家の皆さんは専門分野のプロとして情報を発信していただく、そのふたつが融合しないと良いサイトにならないのですね。
そういう意味でのサポートや教育体制は、専門家向けにいろいろと行なっております。
目指すは「こだわり消費ナンバーワン」ですから、その為にはシステムだけでなく、人の知恵や知識をもっともっと紡いで、最終的には進化させていくということです。今はガイドやプロファイルの出展者など約1,300人の専門家がおりますが、これらの専門家の人数を、5000名程度に増やしていく予定です。
ここに来ると、その道のプロの知恵や、その道のプロの提供しているサービス等が受けられるという、ユーザーが何かにこだわりたい時にベストな場所としてのAll Aboutとなることが、当面の目標ですね。
それはインターネットだけでサービスが提供されるワケではなくて、対面でも紙でもあるかもしれませんし、イベントかもしれません。インターネット企業であり続けることがコンセプトではない会社だと思っております。
それはあと3年程で「こだわり商品だったらAll Aboutだよね」と言われるような存在になるのが当面の道しるべだと思っております。


1965年神奈川県生まれ。
1987年、リクルート入社。
2000年、リクルートを退社し、リクルート・アバウトドットコム・ジャパン代表取締役社長兼CEOに就任。
2001年、インターネット情報サービス「All About Japan(現All About)」開始。
2004年、社名をオールアバウトに変更。
2005年、オンラインショッピング事業「All About スタイルストア」オープン。
JASDAQ証券取引所に上場。
専門家マッチングサービス事業「All About プロファイル」オープン。
2006年、金融サービス事業のオールアバウトフィナンシャルサービスを設立、取締役に就任。
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