

●簡単に大金が飛んでゆくマス広告の経費
中小企業が新製品を作り出したときにその製品がB2Cの商品ならば一般大衆(マス)にその製品の存在を認知させなければならない。手っ取り早いのがマス広告を打つことになるだろう。広告と言ってもどの媒体を用いるのかや、どれくらいの部数、視聴者にPRするかで金額は大きく異なってくる。TVCMでも放送しようものものならば、制作費と放送料とで数百万から数千万は簡単に飛んでゆく。新聞に簡単なチラシを折り込んでもらうだけでも50万円くらいは簡単に飛んでゆく。何しろ広告を打つには多額の費用がかかるのである。
そこでビジネス書やマーケティング書にはお金をかけずに自社や製品をアピールするための魔法の方法が記述され、金欠な経営者の心を掴もうとしているのだが、その魔法の方法は大抵の場合“パブリシティー”(以下「パブ」)の活用である。
パブとはマスコミに記事にしてもらうように働きかける行動を指すのだが、パブとして取り上げられるために、まずPR(プレスリリース)をする。
上記で「魔法の方法」と明示したのはこのパブは一見すると軍事金の無い経営者にとって金のなる魔法の木のような方法で、効率的なマーケティング活動に見えるからだ。
●パブの効用
マス広告と、パブとではどんな違いがあるだろう。パブはマスコミが記事や番組として出版、放送するものだ。マスコミという第三者からの紹介記事なので、読者は信頼性が強いと考える。たとえお金を払って広告を打つにしても、母体となるマスコミの審査があるので“何でも好き放題”というわけにはいかないものなのだが、読者からすると広告は「都合の良いことばかり書いて、消費者を騙してお金を取る営利団体」に見えるものなのだ。とりわけ自分が聞いたことも無い企業広告の場合、消費者の拒否反応はさらに強くなる。
世間をにぎわせている「あるある大事典の捏造問題」で視聴者が騙された理由はそれがマスコミの報道だったからだ。折込チラシの中で「納豆は痩せる」というコピーとともに、納豆会社が広告を打ったならば消費者は胡散臭いと分かるはずだ。天下のTV局が日曜のゴールデンタイムに放送したからこそ消費者は騙され、そして大問題になったのである。つまるところパブは消費者の信頼を得易い。
その上、パブは無料だ。マスコミの記者や局のディレクターが「面白そう」と感じてくれさえすれば無料で信頼性の強い広告を大衆にアピールすることができる。
(有料で記事にしてもらう場合もある)
●パブを活用するための秘策とは?
このようにパブは金の無い中小企業にとって魔法の方法である。そこで多くのビジネス書はパブの活用を強く読者に勧めるのだが、多くの書物の中で提示されるパブの活用法は「数撃ちゃ当たる」作戦である。「あなたは何も失うものは無い。マスコミ側はネタに困っているにも関わらず自分からネタ探しに行かない怠慢人間の集まりだから、自社や製品のポイントを書いてFAXしまくれ!」と煽ってくる。
本書はこのような気合系のパブ活用法に一石を投じるもので、そのプレスリリースするときのポイントとして以下の4点が挙げられている。
①何がテーマなのか?(新商品販売開始・新技術開発・新経営戦略・人事組織変更・M&Aなど)
②背景・経緯および特徴・差別点
③公表できる具体的な数字(経営指標や売上げ目標数字・開発金額など)
④今後の見通し
(本書87ページより抜粋)
前述の気合系のビジネス書には「そんなオイシイ話はあるはずが無いと、誰もが思い、そしてFAXを送る人はほとんどいない。だからこそFAXすれば人生が変わるのだ!」とまで書かれており、一念発起、恥をしのんでFAXしようと決意するのだが、実際にはやっぱりFAXを送らないままの圧倒的多数に含まれるのがオチだ。
なぜそんな結論になってしまうのかと言うと、自社の製品が新規性もなければ、公表できる具体的数字もなく、今後の見通しも不確かであることを社長の自分が誰よりもよく分かっているためである。
新規性も差別化もある製品、サービスならば広告費を掛けてマス広告を打ってもペイできる。この製品、サービスならば広告費がペイできないことを社長自身が誰よりも認識しているからこそ、パブにすがろうと思っている。
つまりパブとして扱われる製品、サービスとは広告を打っても反応がある製品であり、パブはその売上げを助長させる働きに過ぎないというのが本質的なところだろう。
中小企業からの情報提供はもちろん大歓迎です。日本経済にインパクトを与える新しい息吹きは、大企業よりむしろ中小企業から出てくるものです。既存社会に何らかの改革をもたらすような画期的なアイデアが詰まった情報は、扱いが大きくなりますよ。大企業に追随しない、独創性のあるニュースを期待しています。私たちは情報を客観的に評価し、事業としての可能性、取り上げる価値があるかどうかなどを考慮したうえで記事にします。ところが中小企業の話は往々にして情熱や使命感が先走りするものです。なので、数字の裏づけがないといけません。ホットな使命感とクールな数字・確実性とのバランスがあるお話がいいですね。
(本書66ページ・日経新聞・徳田潔氏インタビューより抜粋)
数字の裏づけがある製品ならば、とっくに売れて世間を賑わせている筈であるし、世間を賑わせている製品ならばマスメディア側から取材の申し込みにくる筈である。PRの本やパブ関連の本を手に取る中小企業経営者は、数値データは無いけれどパブとして取り上げられる方法があるのではないかと思って本を買う。しかし本書には、そして当然のことながらどの本にもそんな魔法の方法は書かれていない。
パブの活用法以前に、ビジネスモデルや製品の再考が求められているのである。
本書はPRやパブのノウハウ本というより、インタビューで成功した人の実例集のような本だ。取り上げられている企業も経営として上手くいっており、数年の実績のある企業ばかりだ。全くのゼロからパブだけで成長した企業など存在しない。
巻末に多くのマスメディアの連絡先が羅列してある。この住所録と、魔法の杖など存在しないということを知るために本書を買う価値はあるのかもしれない。
【オススメ度(辛口)】
山見式PR法~メディアが取り上げたくなる5つの切り口 ★★☆☆☆
次回コラム予告
「10倍儲かる通販ビジネスの秘密」臼井由紀著
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沖 広一郎 ブログ
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