沖さんコラム

取材記事


ロゴマークの付いていない偽ブランドなんてありますか?~『偽ブランド狂騒曲 ~なぜ消費者は嘘を買うのか』サラ・マッカートニー著

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●つまるところブランド力とは信頼の証だ


 先日テレビ東京の「ワールド・ビジネス・サテライト」を観ていたら「資産化するブランド」と題してブランドの特集をしていた。その番組によると巷の約8割の人間が商品を購入するさいに“ブランド”を意識していると言う。このデータによると約2割の人間はブランドを意識せずに商品を選択しているということになるが、それらの人間も「ブランド物は買いたく無い」という逆向きの意識が働いているのであって、結局のところほとんどの人間が好きにせよ、嫌いにせよブランドを意識していることになるだろう。


 基本的に強いブランド力は、それに応じて商品に高い値付けがされる。ブランドを形成するには時間がかかるものだ。長い年月をかけてという時間軸の裏づけが“信頼”へと結びついている。いきなり見ず知らずの企業が高価格で、その価格に見合った高性能、高品質の商品を作ったとしても普通消費者の心を掴むことはできない。


 圧倒的多数の消費者は無知なのである。自分自身の眼力で商品の「良い悪い」を選別することはできない。多くの消費者は質屋の目利きのような技術は持っていないのだから、信頼が強い製品を買いたいということになる。ブランドを求める消費者の1つの心理は「せっかく高い金額を払うのだから、騙されたくない」というものだろう。強いブランド力を構築している商品は、多くの消費者が、長い年月に渡って“裏切られなかった”ことの証明になっているのである。


●偽物と分かっていて買うフリーライダー


 ブランド品とは高級な品質や高性能な要素のある商品なので、当然その品質代や、商品の開発費用の分、価格は高く設定される。そしてブランド力を継続し、維持するための広告費やブランドイメージを高めるための費用がかかってくる。たとえば都心の一等地に店舗を構えることや、世界的なスポーツを協賛、社会的地位向上活動への参加などでかかる費用のことだ。これが俗に言う“ブランド代”なのだが、前述しているとおり、このブランドが商品についていることで、消費者は「信頼」を買うことができる。


 ところが基本的に“闇”(ブラックマーケット)ではブランドの名前をタダで拝借したニセモノが売られている。このニセモノの中にもホンモノと比べて遜色ないほど高品質で、高性能な偽ブランドも存在する。中には本当に全く同じ品質の製品を闇のルートで仕入れた偽ブランドもある。このニセモノは正規の店舗で買うステイタスが無いだとか、保証書が付かないというマイナス面はあるものの単純に良いモノが欲しいという物欲だけがブランド品を買う目的だとする人にとって魅力的な商品になるのだろう。


 本書では世帯や個人の可処分所得の違いから、ホンモノのブランド品が買いたくても買えない層が存在すると指摘している。


 本物か偽物かを選べる人たちは運がいい。ではそういう人たちはどちらを選ぶのか。それは機能的属性に比べて象徴的価値がどれだけ重要か、その人がどのような社会集団に属しているか、そして誰かに偽造品だと見破られると思っているかどうかによって左右される。
(本書58ページより抜粋)


 私は一瞬この指摘は間違っていると非難しようと思ったが、よくよく考えるとこの指摘は確かに正しい。私は一瞬「偽造品であることを回りにアピールして買う人もいる」と主張しようと思ったのだ。しかし彼らはどの集団でもアピールしている訳ではなく、バレることが最初から分かっているから、それならば自分から言ってしまおうと計算しているに過ぎない。見破られることがまずありえない集団の中ではさもホンモノを持っているように装っているのである。


●ロゴマークの付いていないブランド品のコートを買えますか?


 ホンモノであろうと、ニセモノであろうとブランド品の好きな人がブランド品を買う最大の理由は“見栄”である。ことによると“虚栄心”と表現できるかもしれないが、その見栄とは自分を表現する場合にブランド品を持つ自分が分かり易く表現できるからだ。


 エルメスの高級婦人鞄「バーキン」を買う人の買った理由を品質だとか、デザインだとか言うかもしれない。しかしそれは決して嘘では無いがそれは副次的な理由であって、一義的な理由は“見栄”であるはずだ。全てのエルメスファンが見栄で大金を支払っているとまで言うつもりは無いが、本当にエルメスの世界に惚れているならばそのブランドのコートを買うことができるだろう。コートは外から見てどこにもロゴがついていないので、一見どこのメーカーの製品か分からないものだ。


 ロゴの付いていない偽造品を見たことがあるだろうか。大勢の人々が偽造品を買うのは、偽のロゴに嘘をついてほしいから、そして真実と思い込みたいからなのだ。
(本書87ページより抜粋)


 ニセモノのブランド品を売る露店商に置かれているモノはカバン、サイフ、時計というものだが、これらの製品はサイズの違いが無いから売り安いのではない。すべからくロゴが付いているので、どこのブランドか分かり安いから消費者に求められるからなのである。


 ホンモノのブランド品でもロゴが分かり易く入っていないものはほとんど売れ無い。売れるブランド品とはロゴが分かり易く入っていて、自分がそのブランドを所持していることを周りにアピールできるものなのである。


 本書は偽ブランドを購入する消費者心理を描いているに留まらず、そのような消費が犯罪集団に結びついていると政治的な話まで描かれている。単純に読み物としては面白いだろう。


 ブランド力の形成には、第一に「クチコミ」が一番効果的だとされており、第二に効果的な方法は「メディアで取り上げてもらうこと」だと指摘している。第二の方法は有名人が実物を使っていることを報道してもらうことなのだが、広い意味で“パブリシティー”だと言えよう。


 次回コラムはこのパブリシティーに注目してみよう。



【オススメ度(辛口)】
偽ブランド狂騒曲―なぜ消費者は嘘を買うのか  ★★★☆☆




次回コラム予告
「山見式PR法~メディアが取り上げたくなる5つの切り口」



【関連サイト】 
沖 広一郎 ブログ
アールモード

掲載日:2007/02/05