沖さんコラム

取材記事


コモディティだからこそウケる“ハズシ”の技術~『風に吹かれて豆腐屋ジョニー』伊藤信吾著

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●「おいしい牛乳」「雪国もやし」そして「豆腐屋ジョニー」の共通点


 一見「何だそりゃ?」というネーミングや、レジに持って行くのも恥ずかしいようなネーミングを付けた商品が流行っている。そのネーミングや、パッケージングは本来のところ、顧客の心を掴むためのプロモーションに他ならない。その意味において広告で「何だそりゃ?」というTVCMを流す商品だって存在するし、そして実際に顧客の心を掴んでいる。


 例えばネーミングで言うならば、明治乳業の「おいしい牛乳」だろう。食品業界において“おいしい”などという形容詞は当たり前すぎるキーワードだが敢えてその形容詞をネーミングに付けた。続いて、TVCMで言うならば「雪国もやし」だろう。こちらはベタなネーミングでは無く、CFで「雪国もやしは、メチャメチャ高いからみんな絶対買うなよ~」とタレントのはなわがギターで唄うメッセージを発信している。


 「おいしい牛乳」「雪国もやし」そして、「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」これらの商品に共通するキーワード、それは“コモディティ”である。コモディティとは、日用品のことで、ブランドや社名に消費者のこだわりが弱く、基本的な機能さえ備わっていれば消費者は満足する製品のことを指す。スーパー独自のブランドを冠したPB(プライベート・ブランド)が活きる商品はコモディティである場合が多い。


●棚で目立つこと、ハズシは以外な「美味さ」


 明治乳業はこの「おいしい牛乳」において、「ナチュラルテイスト製法」という特許を取得している。「雪国もやし」においても、薬品等は使用せず、魚沼のおいしい水と原料の豆だけで栽培した本格的なものだ。男前豆腐店においてもそのコンセプトは同様で、主力商品の「男前豆腐」においては、消費者の口に入るまで水を切り続ける独自のパッケージを開発し、「豆腐屋ジョニー」においてはデザートとしても味わうことができるほどの甘さを実現した本格的なものだ。


 これらの商品は、こんなネーミングや、こんなCMを用いなくても十分に勝負できるだけの製品特性があるにも関わらず、どうしてこのようなプロモーションを用いるのだろう。それは一重に、このネーミングやCMの方が“普通”より“目立つ”からに他ならない。


 スーパーには数多くの製品が溢れている。その中でとりあえず目立つこと。そして一度試してもらったら、「意外に美味いじゃん」というCSの高さで、その後も選択してもらうというリピートを期待している。コモディティとはスーパーの特売で用いられる商品である。その特売に利用されず、つまりは価格ONLYの勝負にならずに、顧客に選択してもらうには取りも直さず“目立つ”ことが最大のキーワードとなる。


 味にはもちろん自信があったのですが、それでは売り場での差別化が難しい。当時はマスコミへの露出なんか全然なかったし、お客さんが「ああ、あのメーカーの新商品ね」なんて思うようなブランドも確立してなかった。パッケージで目立つしか選択肢が残されていなかったんですね。
(本書41ページより抜粋)


●クチコミを利用する安価な商品広告


 男前豆腐店のホームページを見たことがあるだろうか。フラッシュ(動画)多用の、ファンキーなWEBなので仕事中にオフィスで見ないことをお勧めする。


http://otokomae.jp/


 この激しいWEBも完全にハズシを狙ってのものだ。「男前豆腐」のヒットの要因は、ブログをはじめとするクチコミ、つまりはバズ・マーケティングによるところが大きい。男前豆腐は一切の広告を打たず、棚で「俺はココにいるぜ!」と商品自体がアピールすること、そしてクチコミ自体がメインの広告となっている。このファンキーなWEBも全て計算してのことだろう。


 排他的ないい方に聞こえるかもしれませんが、僕は半径100メートル以内に、自分が面白いと思っていることに同意して盛り上がれる人間がいるとは、最初から期待していない。だって、ものすごく人の裏、人の行かないところを狙っているわけで。スタート段階から僕はすでに極少数派なんですよ。


 でも、いろんな場所にバラバラに存在している少数派たちを、ネットはつなげてくれる。ジョニーに感激するような人が遠くにいながら結ばれてるんですね。会社のホームページを充実させようと考えるのも、その理由がある。
(本書91ページより抜粋)


 「豆腐屋ジョニー」のプロモーションは、スーパーで埋もれるコモディティを売るためのマーケテクに溢れている。さて、このヒットにあやかって「男のミネラルウォーター」というパクり商品まで登場した。商品企画において他者で売れているものをパクる(模倣する)のは基本なのだが、ただ単純に「男」をつければ売れると思っている安直さがいただけない。「目立つ」ことは棚で目立つことの一次的な要因で、副次的な要因に「驚きの機能(味覚)」が備わっていなければいけない。


 さてこのプロモーションを活かして次はどんな製品がベタなネーミングと、ベタなCMを展開してくるだろうか。私は驚きの味覚機能や、製法を持った「卵」ではないかと想像しているが、いかがだろう。


次回コラム予告
『アマゾンのロングテールは、二度笑う』


【オススメ度(辛口)】
風に吹かれて豆腐屋ジョニー―実録男前豆腐店ストーリー  ★★★☆☆




【関連サイト】 
沖 広一郎 ブログ
株式会社セノビー

掲載日:2006/11/27