

●「殿様商売」と姫様商売
このタイトルを見て多くのマーケッターが感じるのは「“殿様商売”の女性版かな」というものだろう。恋愛の法則として最上位に君臨する鉄則は「押したら相手は逃げていく」というものだ。マーケティングと恋愛は同じであり、ビジネスにおいても「押せば押すほど客は逃げていく」。所謂「お願い営業」では上手く行かないという“常識”のアンチテーゼとして「殿様商売」という考えがある。
企業はよく、
「お客様あっての○○です」
と言いながら、たいてい上面だけで、ネームバリューや条件、お金で人を動かす殿様商売をしている。
(本書182ページより抜粋)
まず著者は「殿様商売」という手法を誤解している。どうやら著者は企業名に胡坐をかき、お金で判断することを殿様商売だと考えているようだが、それは違う。殿様商売とは「お客様あっての○○です」と顧客やクライアントに迎合することでは無い。むしろ「いやなら買ってもらわなくて結構」という態度で顧客を選別することだ。恋愛においてしつこい男や女が嫌われるように「お願い営業」は反って顧客の反発を招くという反省から来るのが「殿様商売」だ。
では「姫様商売」とは何なのか。本書は「殿様商売」とは全く関係ない。それは口コミによる「バズ・マーケティング」の手法である。
●女性の赤レンジャーによるによるバズ・マーケティング
「バズマーケ」とは口コミによる広告表現方法のことである。バズには情報発信者と情報伝達者の2タイプいるのだが、本書は「情報発信者の選別」に重きを置いている。
一時期、女子高生をやたら持て囃(はや)している時があった。全ての文化や流行は女子高生が発信しているというように「とりあえず女子高生の間で流行らせれば世間に伝染する」と考えられていた。その結果、目立つ女子高生を渋谷のセンター街で捕まえて来て、バイト代を餌にグルインをし、好き勝手に話す女子高生を有り難がる企業が少なからずあったのは確かだ。
好き勝手に我が者顔で話す女子高生を有り難がるマーケは下火になったが、それでも口コミと言えば「とりあえず数をバラ撒く」という手法をしている企業は未だに多い。口コミで難しいのは有効な情報発信者の選別である。今でも女性の情報発信者と言えば「CanCam」を愛読し、エビちゃんが好きでヴィトンやシャネルなどのブランド大好きという人をイメージしている企業は多い。彼女たちは情報伝達者ではあるかもしれないが発信者では無い。所詮彼女たちはモモレンジャーだ、アカレンジャーは情報には敏感だが人と同じことをするのは嫌いで、「それって良いね」と特別視されることを好む。
みんなで服を買いに行ってそのうちのひとりが新しい服を試着する、という場面で、無条件に「それいいね、似合っている」というのがモモレンジャーで、「●●ちゃんには、こっちのほうが似合うんじゃない?」と言えるのがアカレンジャー。
(本書28ページより抜粋)
●情報発信者「赤レンジャー」はどんな人
本書の中で指摘されている情報発信者(ヒメ)とはリーダーシップの強い女王様では無い。誰からも好かれ、いや誰からというよりもとりわけ同性の女性から人気があり好奇心旺盛でいろんな分野に博学な女性である。具体的に著者は本書の中で「首都圏の実家住まい、一般職、専業主婦願望の女性」というように描かれている。全てに当てはまる基準では無いだろうがその具体像は納得できる。
彼女たちだけを集め、彼女たちを無償で仕事(口コミ)してもらう方法は「特別感と、エコ贔屓」だと著者は言う。お金や商品の報酬では無く、ヒメになれる特別感を報酬として進んで仕事をさせる方法は口コミのマーケティングとして正しい。
多くの企業が注目しているように、女性のクチコミ効果は商品の販促という場面で、大きな力を発揮している。実際に、ヒメたちに「どうしてその商品を買ったのか?」と聞くと、たいてい「友達が良いって言ったから」という答えが返ってくる。
確かに、クチコミがきっかけで、実際にモノを買っているのだが、次の点をとりちがえてはいけない。
この場合のクチコミとは、「たくさんの人が良いと言ったから」ではなく、「友達の誰誰ちゃんが良いと言ったから」という、たったひとりのクチコミで買うというのが実態だ。
(本書109ページより抜粋)
口コミは自然発生的に起るものでは無く、企業側広告側から演出し能動的に伝染させるものだと現在は考えられている。しかし「演出」は確かに必要だが、自然発生的に起った口コミは「演出された口コミ」より効果的だ。本書の中でのヒメ(情報発信者)は確たる自分を持ち、影響を受けない人たちだ。いわば自己主張の強い人たちを企業が囲い込むことは難しいだろう。しかし著者は恐らく「囲いこんじゃダメなんだよ」と言うだろうが。
実は女性は男性以上に異性にモテたいと思っている。しかしそれ以上に女性は女性にモテたいと思っている。本書の中で記述されているように「生まれ変わったら愛犬になりたい」というのが女性の気持ちを全て表現しているといえよう。
次回コラム予告
『独身王子に聞け!―30代・40代独身男性のこだわり消費を読む』
【オススメ度(辛口)】
姫様商売―身近なセレブでブームを作る ★★☆☆☆
【関連サイト】
沖 広一郎 ブログ
株式会社セノビー