特集 広告・マーケティングの近未来

「近未来」シリーズの第二回は、アブラハム・グループ・ホールディングス株式会社・高岡壮一郎 氏にご登場頂き、近年注目を集めている「富裕層マーケティング業界」についての近未来を語って頂いた。

【1】 「富裕層」の定義

 日本人の100人に一人は富裕層。「富裕層」は「ニート」よりも人口が多い。弊社では、純金融資産1億円以上の方を「富裕層」と定義している。富裕層は日本国内で147万人で、日本の人口の1.2%。他方、「ニート」と呼ばれる人たちは85万人。日本は世界第2位の富裕層大国で、富裕層が日本国民を支えていると言える。

【2】富裕層の方のライフスタイル(情報収集・消費行動を含む)について

 情報収集においては、マスメディアからの情報ではなく、同レベルの知人等の口コミを非常に重視している。

 そもそも富裕層にも二種類存在し、ご両親から資産を相続した富裕層と、本人の能力を高めた結果として富裕層になられた方がいる。人口としては後者が多い(経営者・医者・弁護士・投資家)。ではそういった富裕層が、なぜマスメディアの情報よりもクチコミを信頼するのかを考える上で、まず、そうした人たちが何故、相当の資産を得ることができたかを考えることが必要だ。

 一般の日本人は平均して1日約3.5時間テレビを視聴していると言われているが、富裕層となりえた人たちは、その時間を惜しんで人一倍、努力してきた。一般の人に対しては「運が良かっただけ」と答える礼儀を有するが、これが富裕層の真相である。その人たちは同じレベルの人たちと切磋琢磨して仕事をしたりしてきたからこそ、社会に何かしらの便益を提供し、結果として、本人が富裕層になっている。それが分かっているからこそ、自分と同レベルの知人からの口コミの情報を最も信頼している。

 例えば、「軽井沢の地価が上がった」というニュースが新聞に出たとする。それは結果であり原因がある。誰かが買ったから土地が上がったわけで、ニュースの時点では当然、そ地価は上がりきっている。一方、富裕層はすでに2年前に軽井沢の土地を購入し、自身が保有する資産を一般の人に売ることを考えている。では、なぜ富裕層が2年前に土地を買うことができたかと言うと、「上がると思ったからだ」と。なぜ、上がると思ったかというと、「知り合いなどでその土地に注目している人が増えてきた」と実感したからと。消費行動においても、そうした仲間からの情報を元に、商品を買っていくといった傾向が強い。

 そういう意味では、富裕層マーケティングにおいては、口コミが起こりやすいような企画や情報流通経路を利用したほうが効果は高い。

【3】 「富裕層マーケティング」においての主な広告主

 最も多いのが金融業(証券等)、二番目に都市部の億ションなどを扱う不動産業、それ以下は自動車メーカーやクルーザーなどの高級耐久消費財を扱う企業などが多い。

【4】 近年、富裕層マーケティング業界が拡大してきた要因

 時代背景として、96年から始まった金融ビッグバンが鍵を握っている。これを契機に、直接金融が盛んになった。例えば、ネット・ベンチャー企業への投資やファンドマネージャーなど、人のアイデア・知恵にお金が集まってきた。つまり、「画一・均一」から「知恵・個性」へのパワーシフト。そして、他者の期待に応え、結果を出した人たちが富裕層になった。日本のGDP増加率の実に2倍以上の伸びを見せている。こうして新しいセグメントが生れ、それに着目した企業が増加。そして、それをサポートするユーザー・マーケティングの業界が拡大してきた、というところではないだろうか。

【5】 同市場の近未来について

 まず広告主においては、商品単価が600万円以上の商品・サービスを扱う企業が本格的に富裕層向け広告・マーケティングに取り組まざるを得ない。自動車に例えると、メルセデスで600万円から。また60万円を年間に10回消費するといった消費財も当てはまるだろう。この金額を出せる消費者は限られているので、マスを使ってリーチする必然性が、費用対効果上そもそも無くなる。メディカル系やシニアレジデンス等を扱う事業者も富裕層重視の姿勢を事業戦略として打ち出しており、広告主として増えてくる。

 ただ、これから富裕層へのリーチを考えている広告主は、「富裕層」をきちんと研究すべきだと思う。広告主の経営陣からすると、2つのミッションがあり、「アクイジション」と「リテンション」を良くすること。本来はリテンションを上げることのほうが費用対効果が高く、企業に多大な収益をもたらすわけだが、多くの現場広告担当者は職務上、アクイジションのみを上げることに熱中してしまう。そうなると、マスを含め様々な施策に手を出し、オペレーションが雑になる。結果として、富裕層に嫌われてしまう。作業を自己目的化してはいけない。真の目的は企業と富裕層がWIN-WINになることであるはず。

 例えば、600万円以上の車を購入する人たちに対して「1000円のクオカードをプレゼント」など。我々からすると「本気ですか?」と。こうしたことは、もっときちんと考えるのが広告主としては大事であるし、使うべきツールも考えるべき。富裕層のことをよく知ることが大切だ。

 これからの富裕層マーケティングにおいては、富裕層の間での口コミが発生しやすくなるような信頼できるメディアにおいて、自社の情報を出すことで信頼度を上げる施策が必要だ。そして、その行為が広告主のアクイジション/リテンションにも繋がるような導線を引いておくことが、重要になってくると思う。

 そもそもの話で恐縮だが、広告主は、「どれが本物の富裕層メディアか?」との真贋を見極める目を持つことが、まずはじめの一歩である。

checkpoint

情報収集では、同レベルの知人等からの口コミを重視

「モノ」から「人」にお金が集まったことで富裕層マーケットが拡大

アクイジションよりリテンションが重要



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